先日、発売になったM1プロセッサ搭載のMac。すでに各メディアでベンチマークテストなどが行なわれており、結構いい成績が出ているようだ。
筆者もさっそく、M1搭載の新型「Mac mini」を購入し、オーディオデバイスなどが動作するのかチェックするとともに、オーディオ性能についても確認してみたので、レポートしてみよう。
ドライバが必要な機器は認識せず。ただしソフトウェアはほぼ問題なし
11月11日、M1プロセッサを搭載したMacが3機種発表されたタイミングで、価格的にも安かったので実験用機材としてMac miniを1台注文した。Mac miniは初代から、適時購入してきたので、おそらく今回のものが筆者にとって7代目となるMac miniだ。
スペック的な選択の余地はあまりなかったが、16GBメモリ、1TB SSDという組み合わせで購入したところ、11月20日にモノが届いた。これまでは、ちょうど2年前に購入したMac mini(3.2GHz 6コアの第8世代Intel Core i7、16GBメモリ)を使っていたが、それと並べてみると、色はちょっと違うけれど、形も端子もまったく同じだ。
なお、最小構成は8GBメモリ、256GB SSDで、価格は72,800円から。
届いてさっそく、DTM関連のハード、ソフトに関するテストを行ない、その結果は筆者のブログであるDTMステーションで紹介したのだが、その結論を簡単にいうと、オーディオインターフェイスに関してはUSBクラスコンプライアントのデバイスは問題なく動作するが、ドライバが必要なものは、M1対応のドライバが登場しない限り使うことができない、ということだった。
現状、対応ドライバを出しているメーカーは極めて少ないが、RMEはPublic PreviewというバージョンのM1対応ドライバを出しており、これをインストールしてみたところ、Fireface UCXを問題なく動かすことができた。まだβ版の扱いとはいえ、このスピードでドライバを出せたRMEには感心するが、このことを考えると各社がM1対応ドライバを出すのは、それほど先ではないのかもしれない。
一方ソフトのほうは、Logic Pro XおよびGarageBandはApple製品だけに、いち早くM1対応していたわけだが、それ以外のDAWは現状はIntel版のまま。
これらをM1版Mac miniにインストールしてみたところ、あっさりとインストールでき、ほとんどのDAWをいつも通りに動かすことができた。
M1プロセッサは、Intelプロセッサとはアーキテクチャが異なるCPUなので、Intel用のソフトがそのまま動作するはずはないのだが、それが動くのはRosetta 2というエミュレーションソフトが機能しているから。
細かく検証できているわけではないが、普通に動き、普通に録音、再生できてしまうのには驚いた。考えてみれば、以前MacがPower PCからIntelのCPUに移行した際もRosettaというエミュレータを用いて互換性を実現していたので、こうしたものをAppleは得意としているのかもしれない。
ただ、各メディアで「M1は“爆速”」と騒がれていた割には、それほどの速さは感じなかった。従来のMac miniより明らかに重く、何らかの原因でDAWが落ちる、ということもしばしばだったので、「まあ、まだそんなもんだろう」というのが正直な感想だ。
新しもの見たさに試してみるのには、非常に面白い機材だが、業務用にはまだ使えない。各ハードウェア用のドライバ、そしてDAWやプラグインなどすべてがM1対応してから購入しても遅くはないと思う。そうなったら、かなり使えるマシンに進化することだろう。
M1版Mac miniでビットパーフェクト出力は可能か?
一通りの実験を終えた後、ちょっと試してみようと思ったのが、この新しいMacの音楽を再生する際にビットパーフェクトが実現できるのかというテストだ。
今年初め「『Macの音は問題なくビットパーフェクト出力』は本当なのか? Mojave/Catalinaでテスト」という記事で行なった実験をM1版Mac miniで試してみたくなった。'20年1月の時点では、Mojave、Catalinaだったが、今回のM1版Mac miniにはBig Surが入っており、OS的にも初めての実験だ。
常識的には、CPUが変わっても、OSが新しくなっても、変わらないとは思うが、実際どうなのだろうか。
以前の実験では、Mac側にSteinberg「UR816C」、Windows側にRoland「UA-101」を接続した上で、オプティカルのS/PDIFケーブルで接続。Macで再生した音をWindowsのSound Forgeを使って録音した。その後、再生した音と録音した音を比較してみた結果、1ビットも狂わず完全に同じ=ビットパーフェクトを実現していたことが証明できた。
今回もその組み合わせで実験しようとしたところ、さっそく問題が起きた。
UR816C自体はUSBクラスコンプライアントなオーディオインターフェイスであり、ドライバ無しでも動作する。ただし、UR816Cのオプティカル端子からS/PDIF信号を送り出す設定をするためにはdspMixFx_UR-Cというユーティリティソフトのインストールが必要であり、これを動作させるためにドライバも同時にインストールする必要があったのだ。
なんとかなるのではと、SteinbergサイトからTOOL for UR-CというIntel版のソフトをダウンロードしインストールしたところ、ここまではうまくいった。ところが目的のdspMixFx_UR-1を起動するとデバイスがない旨の表示されてしまい、どうにもうまくいかないのだ。
仕方がないので、つい先日購入したPreSonus「STUDIO 1810c」をM1版Mac miniに接続。が、これはオプティカルのS/PDIF出力がなかったので、Windows側をRME Fireface UCXに切り替え、コアキシャルで接続して実験したのだが、どうもうまくいかない。おそらく筆者が不慣れなためどこかで手順を間違えている可能性がありそうなので、ここは一旦諦め、作戦変更。
次に試したのは、M1版Mac mini側はPublic Previewのドライバを使った状態でFireface UCXを接続し、Windows側にUA-101を接続する方法だ。
Mac miniの出力先をUCXにするとともに、設定画面で、オプティカルの出力フォーマットをS/PDIFのConsumerに設定。さらに、オーディオ機器の出力設定でADAT/SPDIFを設定。この状態で、テスト曲のWAVファイルをダブルクリックするとミュージックが起動。音はUCXのオプティカル端子から出力され、UA-101へ到着。UA-101側はデジタルロックがかかるとともに、Sound Forgeへと流れてくるので、これを録音してみた。
この結果をefu氏のフリーウェア「WaveCompare」で比較してみたところ、完全に一致。当初の読み通り、M1版Mac mini+Big Surの環境においても、ビットパーフェクトを達成することが証明できた。
ヘッドフォン出力でアナログ音質もチェック
次に試したのは、非常にアナログな、音のベンチマークテストだ。
M1版Mac miniにはヘッドフォン端子があるので、この出力の音質がどの程度のものなのか、サイン波とスウィープ信号を使って特性を見てみることにした。
以前、この手の実験では、Steinbergのオーディオインターフェイス「UR22mkII」をWindowsに接続して使っていたが、先日測定機用としてFireface UCXを購入したので、今回からはこちらを使うことにする。
ソフト側は、MAGIXのSound Forge Pro 14 Suiteを使用。もっとも、単純にM1版Mac miniの性能だけを測定しても分かりにくいので、こちらも先日購入したばかりのiPhone 12 Proでも同じサイン波、スウィープ信号を流して、同じくUCXを接続したWindow環境で録音した。
efu氏の計測ツールWaveSpectraで確認してみた結果がこちらだ。iPhone側もMac側もボリュームは最大にしているが、この最大音量でも入力レベル的にはまだ少し足りないため、UCXの入力ゲインを少し上げている。
続いてM1版Mac miniでも同じ実験を行なってみた。
M1版Mac miniはiPhoneよりもさらにレベルがずっと小さかったので、UCXの入力ゲインをさらに上げて、揃えることにした。その結果がこちらだ。
違いは明らかで、やはりiPhoneのほうが圧倒的に高音質ということがわかる。
大きな差が出たのはSNの違い。まあ入力ゲインの引き上げによってノイズが増幅されてしまう可能性も否定できないが、そうはいっても、結構な違いである。同じApple製品であり、同じARMコアのCPUを使ったiPhone 12 ProとM1版Mac miniだが、アナログのオーディオ出力という意味では、結構な差がある。やはりMacで高音質に音楽を聴くには、USB-DACやオーディオインターフェイスが必須であるということだろう。
以上、ちょっぴり変わったベンチマークテストではあったが、今回はM1版Mac miniの音質性能を検証してみた。前述のオーディオインターフェイスの別の組み合わせなど、まだ消化できていない部分もあるので、追々検証していこうと思っている。
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