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Saturday, February 20, 2021

リマスター版「ディアブロ II」は,あえて原作のゲームエンジンを採用。あのグラフィックス表現はどのようにして作られたのか - 4Gamer.net

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画像集#002のサムネイル/リマスター版「ディアブロ II」は,あえて原作のゲームエンジンを採用。あのグラフィックス表現はどのようにして作られたのか
 北米時間の2月19日から20日の日程で開催中のBlizzard Entertainmentのデジタルイベント「BlizzConline 2021」において,2000年にリリースされた名作ARPG「ディアブロ II」のリマスター版となる「ディアブロ II リザレクテッド」PC / PS5 / PS4 / Xbox Series X / Nintendo Switch。以下,リザレクテッド)がアナウンスされた。

 4Gamer読者にとっては釈迦に説法かもしれないが,あらためて説明しておくと,「ディアブロ II」は1997年に登場して「アクションRPG」というジャンルを打ち立てた,「ディアブロ」の続編にあたる作品だ。アクション性の高さと,相手を倒すことで無数のアイテムがランダムに手に入るというルートシステムにより,ロールプレイングゲームというジャンルに新風を吹かせたタイトルでもある。

オリジナル版ディアブロ II
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 そんな「ディアブロ II」だが,開発を行っていたBlizzard Northが2005年に活動を終了したことにより,長らくリマスター版にまで手が回っていなかった。当時開発に関わった業界関係者が,「ファイルデータの中には破損しているものも多いのでリメイクは難しい」などと発言したこともあり,多くのゲーマーがリマスター版の声を上げることもなかった。
 実際,そうしてBlizzard Southに開発がバトンタッチする形で2012年にリリースされた「ディアブロ III」は,リリース当時のテクニカルな問題や,オークションハウスの実装,さらには旧開発メンバーとのSNS上での仲たがいなど,さまざまな問題を生んだ。ディアブロはBlizzard Entertainmentにとって非常にセンシティブなIPでもあるのだ。
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 そういう経緯を踏まえてみると,今回の「ディアブロ II リザレクテッド」は「ゲームエンジンはオリジナル作品のもの」という事実がインタビューで明かされており,「ゲームプレイには極力ノータッチ」という一貫した姿勢を崩さず,時間をかけて開発を行って来た様子がうかがえる。「ディアブロ IV」と「ディアブロ イモータル」という新作の前に,リマスター版という作品として埋もれてしまいそうだが,ベテランにとっても若いプレイヤーにとっても,プレイしておく価値のある作品なのだ。

 今回のインタビューでは,そんなリマスター版のリードプロデューサーを務めるクリス・レナ(Chris Lena)氏と,アート担当のゲームプロデューサーであるマクシーン・バーチュー(Maxine Virtue)氏に話を聞くことができたので,その内容を紹介しよう。

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21年前の技術を再利用しつつもQoLを向上させたHDリマスター版


4Gamer:
 オリジナル版のリメイクは多くのファンから要望にあったと思いますが,発表までにどうしてこれほどの時間がかかったのでしょうか。

クリス・レナ (以下,レナ)氏:
 ゲームの根底にある部分はまったく同じですが,シネマティックスを追加したり,QoL()を向上させたりと,このゲームが2020年代になってもプレイに耐えうるかというのを,慎重に確かめながら開発を進めていました。

マクシーン・バーチュー(以下,バーチュー氏):
 具体的に,どれくらいの時間をかけて開発をしていたかは公表していませんので,「かなりの時間」とだけにしておいてください(笑)。

※「Quality of Life」の略。ここでは「ゲーム体験の質」というようなニュアンスに近い。

4Gamer:
 開発には,Vicarious Vision(「Tony Hawk's Pro Skater 1 + 2」のリメイクを担当したメーカー)も参加しているのでしょうか。

レナ氏:
 そうです。もともとは兄弟会社であるActivisionの傘下にあったニューヨークの開発チームですが,彼らはニューヨークのオフィスを移動しないまま,Blizzardの一部となりました。今回の「リザレクテッド」は,それ以前から開発を手伝っていてもらっており,我々カリフォルニアのチームとはリモートで共同作業をしていた間柄です。幸いCOVID-19の影響を受けることもほとんどなかったですね。

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4Gamer:
 移植に長けた彼らも関わっているということは,ゲームエンジンも新しいものが利用されているのでしょうか。

レナ氏:
 実のところゲームエンジンはオリジナル版のものなのです。その上にレイヤーを重ねていくような形で,ゲームを最適化を行っています。例えば,オリジナル版は25fpsに固定されており,「リザレクテッド」もそこは変えられない部分なのですが,その上からグラフィックス効果や,インタフェースの変更を付け加えているような形で作りました。
 オリジナルのソースコードはそのままで,すでに壊れてしまっているようなアートアセットもあったのですが,ほとんどリカバーできていますね。それよりも我々が重視したのは,オリジナル版と同じ感覚で遊んでもらうことです。もし,妥協して新しいエンジンでリメイクしていれば,それは不可能だったかもしれません。

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4Gamer:
 なるほど。トレイラーを見る限りは,パーティクル効果が利用されていたりと,見違えるように美しくなっていますよね。この「見違える」というのが,原作と同じプレイフィールを目指している本作に適当な表現なのかはわかりませんが……(笑)。

バーチュー氏:
 「リザレクテッド」のアートワークに関して言えば,3Dレンダラーは完全に新しいものなんです。オリジナル版では,3Dモデルを作ってから2Dに描き直すというプロセスを踏んでいたので,その3Dモデルをそのまま使って3Dキャラクターとして復刻させることもできたわけです。
 地表を伝う霧や,周囲を照らしながら放たれるライトニングなどをうまく表現できるパーティクル効果に加えて,オブジェクトの破壊やモンスターを倒したときなどの物理レンダリング,それからダイナミックライトなど,ゲームプレイの質を変えない新しい要素は非常に多いんですよ。そのおかげで,さらにゲーム世界への没入性が高まったと感じています。

4Gamer:
 オーディオ面でも変化はありますか。

バーチュー氏:
 セリフなどのボイスオーバーはすべて再利用しておりますが,環境音を新しく加えています。ですから,第2章で戦闘が終わってじっとしているときに,ふと砂漠に吹き荒れる風の音が耳に入ったり,第3章では動物や昆虫たちの鳴き声が聞こえてきたりします。このあたりは,我々の開発者たちの遊び心が働いた部分でもありますね。

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4Gamer:
 ボイスオーバーは,ステレオサウンドや3Dオーディオが一般化している現在の環境に対応できているのでしょうか。

バーチュー氏:
 ボイスオーバーは,20年前の声優さんたちを揃えるのが困難であったり,録音技術の向上で新しい音源との質の差が大きく出てしまったりする部分です。そのため,ボイスオーバーに関して言えば,AIアップスケールという自動最適化テクノロジーを利用しています。低音質に妥協しないことで,Dolby 7.1サラウンドをサポートしています。

4Gamer:
 シネマティックスはどうでしょうか。

バーチュー氏:
 オリジナル版には27分間ぶんのシネマティックスがありましたが,これは完全に作り直しています。フレーム毎の再現性を重視しており,Blizzardの誇るビジュアルチームが驚くような作業を成し遂げてくれています。これだけでも見る価値は十分ありますよ。

4Gamer:
 敵を倒してアイテムを手に入れ,それを選別して町に戻っては倉庫に入れたり売り払ったりするようなゲームサイクルは,ファンが熱狂した部分だと思います。一方で,インベントリの空きが少なく,頻繁にポータルを開いて街に戻る必要が生じるのは,疎ましく感じるところでもありました。このあたりは手を加えているのでしょうか。

レナ氏:
 そうですね。やはり「ディアブロ II」という名作が生み出したゲームの質そのものにはタッチしたくないと考えています。そして,そうした手間もディアブロ IIらしさであると思います。その上で本作では,傭兵キャラクターを1人加えることでアイテムを保持しやすくなっていますので,より長い時間戦場に滞在できるでしょう。
 また,グラフィックスやオーディオの向上に加え,ゲームプレイを損なわずにゲーム体験を強化していくというQoLについては,例えばインタフェースを最適化したり,収納箱を拡充するなどで対応してます。

 リザレクテッドでの倉庫は,オリジナル作品の6x8マスから10x10マスに増やしています。加えて,「ディアブロ III」から学んだことを活かすべく,共有倉庫も用意していますので,キャラクター間でのアイテム移動は楽になるはずですし,拾ったばかりのアイテムと所有済みのものを比較するための,新しいウィンドウを追加しています。
 本作にはオプションで「Auto Gold Pickup」という機能を加えており,もし散乱したゴールドを1回1回拾い上げたくないというのであれば,自動的に獲得することも可能ですよ。

画像集#010のサムネイル/リマスター版「ディアブロ II」は,あえて原作のゲームエンジンを採用。あのグラフィックス表現はどのようにして作られたのか

4Gamer:
 マルチプレイについても教えてください。オリジナル版のラダーは今も続いていますが,リザレクテッドではどのような扱いになるのでしょうか。

レナ氏:
 まず,マルチプレイヤーで新しく追加している機能としては,Auto Partying(自動パーティ結成)があります。一緒にプレイする仲間がいない場合は,これをオンにしておくだけで,ほかのプレイヤーが自動的にパーティに加わってくれます。最大8人までのパーティ(軍団)組んだうえで,それぞれが傭兵を連れ回せるので,壮大なバトルを満喫してもらえるのではないでしょうか。

バーチュー氏:
 ラダーシステムは,シーズンの間隔を短くするので,上位の入れ替わりが頻繁に起きるようになります。加えて,クロスセーブもサポートしていますので,自宅ではPCで,友人宅ではコンシューマ機で一緒に続きを遊ぶといったことも可能です。ただし,サポートされているプラットフォームに限ります。現段階では,どのプラットフォームをサポートするかはまだお話できません。

4Gamer:
 操作周りはどのように変わっているのでしょうか。

レナ氏:
 ご存知のように,「ディアブロ II」は地面をクリックしてキャラクターを移動させていくシステムでした。その部分は「リザレクテッド」でも同じですが,コンシューマ機を使ってコントローラでプレイする場合は,ジョイスティックでの移動に対応させています。また,PCに関してもゲームパッドをつなげれば,コンシューマ版と同じ操作体系で楽しめます。

画像集#011のサムネイル/リマスター版「ディアブロ II」は,あえて原作のゲームエンジンを採用。あのグラフィックス表現はどのようにして作られたのか

4Gamer:
 拡張パックの「ロード・オブ・ディストラクション」は,どのように本編に組み込まれているでのしょう。

レナ氏:
 ゲームを開始するときに拡張パックを込みでのストーリーを選択した場合,アサシンとドルイドを含めた7人のキャラクターを選んでプレイできます。「どうしてもオリジナル版を最初にプレイしたい」という人もいるでしょうから,その場合は本編だけを先にプレイし,ストーリーが終わった時点で,拡張パック分を追加することもできます。

4Gamer:
 「ディアブロ II」は,多くの熱狂的なベテランゲーマーに語り継がれてきた作品である反面,名前だけは知っているという若いゲーマーも多いと思います。そうした層へはどのようにアプローチしていくのでしょうか。

レナ氏:
 同じゲームプレイを提供してベテランゲーマーに評価してもらいつつ,若い世代のゲーマーが,古さを感じずに楽しんでもらえるよう,Blizzard Entertainmentが大切にするコミュニティを意識して開発しております。誰もが満足できる作品を作るのは難しいことは承知していますが,1つのチャレンジとして楽しんでいます。「ディアブロ」という看板はプレッシャーであるのは間違いないですけどね。ゲーム開発者にとって,この作品に関われることに喜びを感じています。

4Gamer:
 今年のBlizzConline 2021は,「ディアブロの1年」と言っても良いほどで,「ディアブロ IV」「ディアブロ イモータル」,そしてこの「リザレクテッド」が同時期に出てしまって,ディアブロファンは時間がないと思いますが……。

レナ氏:
 いや,ぜひ時間を作ってほしいですね(笑)。

バーチュー氏:
 せっかくですので,「ディアブロ II」を最初にプレイして,「ディアブロ イモータル」,それから「ディアブロ III」をもう一度プレイした上で,「ディアブロ IV」に入っていただければベストだと思います。ストーリーも順を追って楽しめますから。「ディアブロ」シリーズは,我々ゲーム開発者もゲーマーも,みな憧れを持ってプレイしてきた伝説の作品ですから,この機会にぜひ楽しんでもらいたいです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

画像集#015のサムネイル/リマスター版「ディアブロ II」は,あえて原作のゲームエンジンを採用。あのグラフィックス表現はどのようにして作られたのか

 「ディアブロ II リザレクテッド」は,2021年内に発売される予定で,公式サイトでは予約販売も始まっている。さらに,PC版向けのテクニカルαテストの応募受付もスタートしており,Battle.netアカウントを持っていればすぐに手続き可能だ。
 なお,本作のボイスオーバーのついての補足だが,日本語版は新しく収録することになるらしい。そのため,テクニカルα時点で日本語化できているかどうかは不明とのことだ。ともあれ,絶大な人気を集めたアクションRPGの原点である作品の公式リメイクであるだけに,「ディアブロ II リザレクテッド」にはしっかりと注目しておきたいところだ。

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