ジョナサン・エイモス、BBC科学担当編集委員
米航空宇宙局(NASA)は18日、探査車「パーサヴィアランス(忍耐)」の火星着陸に成功した。
パーサヴィアランスは米東部時間午後3時55分(日本時間19日午前5時55分)、火星の赤道付近にあるジェゼロと呼ばれる深いクレーターの中に降り立った。
NASAが火星に探査車を着陸させたのは、2012年の「キュリオシティ」に次いでこれが2度目。
米カリフォルニア州にあるNASAの管制室では、着陸が確認されると、エンジニアたちに歓喜が広がった。ただ、新型コロナウイルス対策のためスタッフは間隔を空けており、抱擁などはなく、拳を付き合わせるなどして喜びを分かち合った。
重さ約1トンのパーサヴィアランスは6つの車輪で移動する。今後2年以上にわたって岩石部分を掘り進め、生命が存在していたことの証拠を探す。
幅約45キロメートルのジェゼロ・クレーターは、数十億年前に巨大な湖があった場所とされる。水があれば、生命が存在した可能性はある。
平らな場所を選んで着陸
パーサヴィアランスは火星に着陸後、2枚の画像を送信した。撮影したカメラのレンズには土ぼこりが付いていたが、それでも車両前後の平らな地表部分が確認できた。
分析の結果、パーサヴィアランスは調査予定地点の南東約2キロの地点に降り立ったとみられる。
NASAで着陸担当チームを率いてきたアレン・チェン氏は「平らな、良い場所にいる。車両は約1.2度しか傾いていない」と述べた。「うまくこの駐車場を探し出し、探査車を着陸させることができた。心からチームを誇りに思う」。
ジョー・バイデン米大統領は、ツイッターでNASAを称賛。「科学とアメリカの創意の力があれば、可能の領域を超えることは何もないと今日、改めて証明された」とコメントした。
火星への着陸は決して簡単なことではない。NASAは経験を積んでいるが、関係者はこの日まで慎重な物言いにとどめていた。
9年前のキュリオシティは、今回とは別の場所に着陸した。ロケット動力のクレードルなど先進的な降下技術を試し、パーサヴィアランスにも活用された。
パーサヴィアランスの管制官たちは今後数週間、火星表面の険しい走行を前に、システムに損傷がないか確認を進める。
メインカメラがついたマストを立ち上げ、ソフトウエアのシステムを着陸用から走行用に変換する。
近日中には多くの写真を撮影し、NASAの科学者や技師たちはそれをもとに付近の地形を分析する。
今後の短期的な目標として、ヘリコプターの飛行実験がある。パーサヴィアランスは小型ヘリを積んでおり、地球外で初となる、動力を使った飛行を試みる。火星での「ライト兄弟的瞬間」と呼ぶ人もいる。
その後、パーサヴィアランスは本格的なミッションに乗り出す。衛星が探知した広大なデルタ(三角州)へと向かうのだ。研究者らは、川の流れによって作られたとみられるデルタで、過去の生命体の手がかりが見つかることを期待している。
デルタでは岩石のサンプルを採取した後は、ジェゼロクレーターの端へと移動する。端の部分では、衛星によって炭酸塩岩の存在が確認されている。炭酸塩岩は地球において、生命活動の情報を保存するのに優れているとされている。
パーサヴィアランスは、顕微鏡レベルまでのさまざまな分析ができる機器を備えている。
パーサヴィアランスが採取した中でも特に興味深い岩石は、小型チューブに詰められ、火星の地表に残される。
NASAと欧州宇宙機関(ESA)は、2020年代末までにこのチューブ回収を目指し、巨額予算の計画を立てている。
新たな探査車、火星で打ち上げるロケット、岩石を地球に持ち帰る巨大な衛星を必要とする、複雑な事業となる見込みだ。
火星探査においては当然、サンプルを持ち帰ることが次に必要な段階となる。
仮にパーサヴィアランスが生命体の存在を示す何かを発見したとしても、それに異議が唱えられるのはまず確実だ。地球における古代の生命体について、議論が尽きないのと同じだ。
火星における過去の生命体をめぐる議論に決着をつけるには、岩石を地球に持ち帰り、より高度な分析をするしか方法はない。
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