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Tuesday, February 16, 2021

Tiger LakeならUMPCで3Dゲームもいけるか?「OneGx1 Pro」を試す - PC Watch

juraganluempang.blogspot.com

UMPCで3Dゲームを楽しむ時代なのか?

 一般的なノートPCより軽量/小型のウルトラモバイルPC(UMPC)は、決してメジャーになる製品ではないものの、根強いニーズがあるジャンルだ。各種パーツの世代が進化し、高性能化や省電力化が見られると、また新たなUMPCがどこかしらから出てくる。

 株式会社テックワンが販売するONE-NETBOOK製の「OneGx1 Pro」は、最新のUMPCの1つだ。7型液晶搭載で623gという軽さを実現しながら、第11世代Coreを搭載し、高いパフォーマンスも期待できる。そして最新のIntel製CPUでは、グラフィックス機能も強化されており、3DCGの描画能力もかなり上がってきている。

 加えて本機には、本体の左右に装着できる専用コントローラがある(別売り、Bluetooth接続)。軽量・小型の本体で高性能なら、コントローラを取り付けて携帯ゲーム機風に遊べばいいじゃない……という発想だ。果たして本機でどこまで戦えるのか。UMPCとしての評価と合わせて見ていきたい。

CPU以外にも高性能なパーツを詰め込んだ1台

 「OneGx1 Pro」のスペックは下記のとおり。

【表1】OneGx1 Pro
CPU Core i7-1160G7(4コア/8スレッド、最大4.4GHz)
GPU CPU内蔵(Iris Xe Graphics、96EU)
メモリ 16GB LPDDR4-4266
SSD 512GB(microPCI-e オンボード)
光学ドライブ なし
ディスプレイ 7型光沢液晶(10点マルチタッチ対応)
解像度 1,920×1,200ドット
OS Windows 10 Home 64bit
汎用ポート USB 4.0(Type-C)×2(うち1基は本体充電にも使用)、USB 3.0(Type-A)×1
カードスロット なし
映像出力 Micro HDMI×1
無線機能 Wi-Fi 6、Blunetooth 5.0
有線LAN なし
その他 音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) 173×136×21mm
重量 623g(別売りのコントローラ込みで723g)
税別価格 168,000円

 CPUは4コア8スレッドのCore i7-1160G7、GPUはCPU内蔵のIris Xe Graphicsとなる。Iris Xe Graphicsを搭載したノートPCの性能は、本誌でもすでに何度も試しているが、本機のような重量623gというUMPCでどこまでパフォーマンスを発揮できるか、また使い勝手に影響はないのかは注目したいところだ。

 ストレージはmicroPCI-e接続の512GB SSD、メインメモリは16GBとなっている。高性能なノートPCに匹敵する構成で、ゲーミング向けにぬかりないスペックと言える。

 本機の特徴として、本体の左右に装着できる専用コントローラがある(別売り、接続はBluetooth)。アナログスティックを左右に備えており、ボタンの数も十分ある。またUSB端子もType-Cが2つ(といっても片方は充電に使うので実質1つ)、Type-Aが1つあるので、マウスなどのゲーミングデバイスの接続も可能だ。

 液晶は7型の1,920×1,200ドットとなっており、10点マルチタッチにも対応している。画面サイズは7型のタブレットをイメージするとわかりやすいが、使用するのがWindows 10となるので使用感は大きく異なる。

 ネットワーク周りはWi-Fi 6対応の無線LANを内蔵。有線LANが非搭載なのはUMPCとしてはやむを得ない仕様だし、コントローラを装着した本体を持ち上げてゲームを遊ぶことを思えば、有線LANは現実的ではない。それでもWi-Fiは160MHz対応で最高2,402Mbpsでの通信が可能だ。充電は最大65WのUSB PDに対応しており、付属のACアダプタは最大45W出力となっている。

 ノートPCとして見た時の注意点としては、Webカメラは内蔵していないこと。またキーボードのレイアウトも一般的なものとは異なる。この点は実際の使用感として後述する。

ほとんどのゲームなら動作可。基本性能は十分高い

 それでは早速気になる実機のテストを行なう。まずはベンチマークテストを試していく。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2506」、「3DMark v2.16.7117」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R23」、「CrystalDiskMark 8.0.1」。

 なお、今回のテストはBIOS標準の設定で行なっているのだが、本機はBIOSの設定でCPU TDPの上限を20Wまで引き上げることができる。今回は時間の都合で検証できなかったが、20Wに設定すればスコアは向上するだろう。

【表2】ベンチマークスコア
「PCMark 10 v2.1.2506」
PCMark 10 4,368
Essentials 9,099
Apps Start-up score 11,194
Video Conferencing Score 7,635
Web Browsing Score 8,815
Productivity 6,190
Spreadsheets Score 5,600
Writing Score 6,843
Digital Content Creation 4,018
Photo Editing Score 6,463
Rendering and Visualization Score 2,259
Video Editing Score 4,445
Idle Battery Life 12時間58分
Modern Office Battery Life 9時間18分
Gaming Battery Life 2時間7分
「3DMark v2.16.7117 - Time Spy」
Score 1,339
Graphics score 1,214
CPU score 3,217
「3DMark v2.16.7117 - Fire Strike」
Score 3,845
Graphics score 4,404
Physics score 8,970
Combined score 1,370
「3DMark v2.16.7117 - Wild Life」
Score 9,106
「3DMark v2.16.7117 - Night Raid」
Score 11,939
Graphics score 15,091
CPU score 5,468
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score 1,974
Average frame rate 43.04FPS
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score 1,224
Average frame rate 26.67FPS
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score 321
Average frame rate 7.01FPS
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
1,920×1,080ドット 1,372
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット 3,011
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット 2,469
「CINEBENCH R23」
CPU(Multi Core) 3,532pts
CPU(Single Core) 1,254pts

 本機に採用されているCPUは、旧来で言うところのYシリーズで、7~15Wをターゲットにしている低消費電力版だ。ゆえに、シングルコアでは約4.4GHz近くまでしっかりクロックが上がるものの、TDP=15Wの制限下ではマルチコアのテスト時は2.1~2.5GHz辺りになっていることが多く、その分マルチコアのスコアはあまり伸びない。それでもUMPCとしては破格の高性能と言える。

 ゲーム系のスコアを見ると、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」で「やや快適」の評価で、平均フレームレートは20.12fpsとなっている。テストは最高品質で実施しているので、画質や解像度を下げれば問題なくプレイ可能だ。

 一方「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では「動作困難」の評価。ほかのテストを見ても最新ゲームをフルHD解像度で快適に動かす性能があるわけではない。ただ、そのあたりについては解像度を720p相当に下げたり、画質設定を下げるなりして、プレイヤーが工夫すればプレイ可能だろう。ちなみに、リアルタイムレイトレーシングを除くすべてのテストで問題なく完走できており、安定性に不安はなかった。

 バッテリ持続時間はゲーミングで2時間強、オフィスユースでも9時間超。短時間のゲーム利用ならバッテリで対応できるし、モバイル用途にも十分使えると言えるだろう。

 ストレージはオンボードタイプのSSDが使われており、165GBと301GBの2つのパーティションに分けられていた。「CrystalDiskMark 8.0.1」の結果を見ると、シーケンシャルリードで1.7GB/sを超えており、かなり高速なものとなっている。なおSSDが512GB×2のモデルがあるほか、512GB×1のモデルにはM2.2242の空きスロットがあるので、ストレージの増設が可能だ(ただし保証対象外となる)。

「CrystalDiskMark 8.0.1」の結果。画像はDドライブのデータだが、Cドライブもパーティションを分けただけなのでほぼ同等

軽量/小型筐体にはやはりメリットとデメリットがある

ブラックの外見はシンプルで用途を選ばない。背面の青いLEDバーは消灯可能

 次に実機を見ていきたい。筐体はブラックで統一されたシンプルな外見で、ビジネスにも問題なく活用できるデザインだ。ただ7型のタブレットに近いサイズ感(厚みはあるが)なので、ノートPCよりは携帯ゲーム機に近いオモチャっぽさはどうしてもある。もっとも本機には専用のコントローラが用意されているくらいなので、見た目のオモチャっぽさは狙っているかもしれない。

 しかし液晶部を畳んで持つと、オモチャらしからぬガッシリした手ごたえがある。筐体がたわむ感触はなく、天板を押してもほとんどへこまない。筐体は小さくとも高い剛性があると感じられる。液晶部はタッチ対応になっていることもあり、厚さは約5mmでしっかりしている。

 7インチで1,920×1,200ドットの液晶は、Windows 10のスケーリングの推奨値(初期値)が200%となっている。これだと実質960×600ドットの解像度で、「3DMark」のインストール時にウインドウが画面外にはみ出してOKが押せないという事態が発生したので、スケーリングの値を下げるのはほぼ必須だ。高精細な画面が好きな筆者は100%でも使えなくはないと感じたが、普通は150%程度で使うのが良さそうに思う。

 液晶の色味はかなり鮮やか。タッチパネルで光沢があることもプラスに働いている。反射もそれなりにあるが、コンパクトな筐体だけに光が邪魔にならない角度や場所で使うのは容易だし、光量も十分ある。視野角も広く、あらゆる方向から見て色相の変化がない。小型のマシンでは視野角の広さは問題になりにくいが、それでも本機は良いものを使っていると感じる。

 ちなみにジャイロが内蔵されているため、筐体を傾けるとタブレットのように画面が回転する。ただ液晶部分は150度くらいまでしか開かず、本体と分離できるわけでもないので、実際のところ役に立つのはジャイロが活用できるゲームぐらいだろう(あまりないと思われる)。

7インチながら1,920×1,200ドットと高精細な液晶。タッチ操作も可能
小さいながら視野角も広い
本体の傾きに合わせて画面が回転する
液晶部の厚みは約5mmでたわみも少ない

 キーボードのレイアウトは、全体的にやや縦長で、端の方はさらに狭くなる。おもなアルファベットのキーは縦約16mm、横約14mm。上段のファンクションキーと数字キーは縦約9mmになる。ホームポジションに指を置いてのタイピングはかなり窮屈だ。キータッチは軽いクリック感があり、ストロークも筐体サイズの割にはしっかりととってあり、感触は良い。

 キー配置は独特で、ホームポジションに手を置くと、右手小指はエンターキーに置かれる。また“@”キーは右下、“[”キーはファンクションキー併用など、よく使うキーの配置も一般的なキーボードとは異なる。このあたりは慣れを必要とするが、ゲームが前提ならさほど影響はないだろう。

 キーボードにはバックライトも搭載。ファンクションキーを使ってバックライトのオン/オフや、光り方の切り替えができる。また筐体背面にも楕円形のLEDバーがあり、青く光る。こちらは使用者からは見えない角度になるため純粋な装飾で、不要ならオフにもできる。

 ポインティングデバイスは独自の光学式ポインティングデバイスとなっており、キーボードの下の狭い隙間に用意されている。四角い部分が上下左右に動くスティックなのかと思いきや動かない。四角の上で指を滑らせると、その方向にマウスカーソルが動く。つまり指先サイズのタッチパッドになっており、指を滑らせては離すという操作を繰り返して動かす。

 珍しいデバイスなので、最初は少々面くらうが、触ってみると操作は直観的で難しくないし、感度も良好で変な動きをしたりもしない。一般的なノートPCのタッチパッドに比べると、大きくカーソルを動かすのがちょっと手間な程度だ。タップするとクリックになるのもタッチパッドと同様だが、こちらは感度が良すぎるのか、タップが微小な移動と認識されることが多い。ただ真横にボタンがあるので、とくに困りはしないだろう。

キーボードはキートップ形状、レイアウトとも独特。小さいながらバックライトも搭載
光学式のポインティングデバイスはタッチパッドと同じ要領で使える

 スピーカーは底面のメッシュ部分に内蔵されているようで、ステレオ感はなく、モノラルのようだ。音質は少しこもって聞こえるものの、低音/高音ともうまくまとめた感じで聞き疲れしない。大きめの音もそこそこ破綻なく出せるので、軽い動画視聴やゲームくらいなら違和感なく使える。

 排熱処理は、底面吸気、背面排気。普段はほぼ無音だが、高負荷時にはファンが回転し、高めの風切り音が出る。かなり小型のファンのようで、風量やノイズは小さいので、気になりやすい音質ながら、ゲームプレイなどでもさほど気にはならない。なおファンの回転は、静音、通常、常時フルの3段階に設定できるので、極力静かな環境で使いたいときにも安心だ。

「フォートナイト」もプレイ可能

本機で「フォートナイト」をプレイ。この画面はゲーム側が推奨した画質「高」で、実際のプレイでは1段階低い「中」がおすすめだが、動作が不安定になることはない

 せっかくなので実際のゲームも試すべく、「フォートナイト」をプレイしてみたところ、画質の自動設定で選ばれた「高」だと、人が多い場面などでカクカクすることが多い。「中」に下げると、概ね20~30fps以上は確保できている場面が多く、そこそこプレイできた。

 さらにコントローラを装着してプレイしてみた。Windows側からは「Xbox 360 Controller for Windows」として認識されており、左右1本ずつあるアナログスティックを含めて動作には何ら問題なかった。

 ただコントローラと本体の固定が緩く、持っている時に少しぐらついてしまう。それもあって、600g以上ある本体を安定してホールドできず、ボタン操作が不安定になる。素早い射撃操作が求められる「フォートナイト」では、人差し指が絡む操作に手間取ってしまうのが致命的だった。

 とくに人差し指で押すボタンが左右に2つずつあるのだが、ここを押し分けながらコントローラのボタンを操作するのは困難だ。コントローラ部のグリップをもっと大きくして、よりしっかり持てるかたちになっていれば良かったと思う。使っているうちに徐々に慣れてはいくが、少し時間がかかりそうだ。もっとも、素早い操作を必要としないタイプのゲームなら十分活用できるだろう。

 コントローラはバッテリ内蔵で、本体と同じUSB Type-C充電器で充電できる。左右2個あるため充電も別々にしなければならないが、1つの充電機でまかなえるのは便利。USB Type-Cの利便性が発揮されている。

専用コントローラを装着したところ。このまま本体ごと持ち上げてゲームを遊べる
コントローラの充電は、本体と同じUSB Type-Cアダプタを使える

 高負荷時はキートップに若干温かさを感じられるが、コントローラ部に熱は伝わらず、ゲーム中に熱が気になることはほぼない。キートップが縦長だったり、配列が独特だったりするので、キーボードとマウスで遊ぶゲームではマッチしないものもあると思うが、ゲーム中の排熱に関してはさほど気になることはないだろう。

UMPCとして破格の性能をどう活用するか

 注目のIris Xe Graphicsを搭載しているとはいえ、最新のグラフィックス技術を駆使した3Dゲームを高画質設定で遊ぶような端末ではない。しかし出先でちょっとオンラインゲームにログインしたり、リビングでくつろぎながらゲームを遊んだりといった、一般的なノートPCでは手間のかかる使い方も、本機なら現実的だ。遊びたいゲームと本機の性能/特徴がマッチするなら、ぐっと魅力が増してくる。一方で、ゲームプレイ時以外にも、超高性能のUMPCとしても活用の幅が広る。

 あとは税別16万8,000円という価格だが、UMPCだけあってスペックの割に高価なのは間違いない。本機は唯一のPCとして使うべきものではなく、あくまでモバイル用のサブ機として、あるいはゲームなどのホビー用として採用できるならば、ほかに代えがたい価値がある。基本性能はUMPCとしてはかなり高く、作りも悪くないので、本機を活用できるシチュエーションがあるかどうかを吟味した上で選んでいただきたい。

筆者愛用の「VAIO P」(右)と。より多くのUMPCが発売されることを期待したい

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