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Thursday, March 4, 2021

PCIe 4.0 SSDのスピードは? Core H35は快適? 新型「VAIO Z」を徹底解説(後編)(1/3 ページ) - - ITmedia

juraganluempang.blogspot.com

 3月5日、VAIOのフラグシップノートPC「VAIO Z」の新モデルが4年ぶりに登場する。ITmedia PC USERでは以前、その外観的な特徴を解説する記事を掲載している。

 新しいVAIO Zは、Intelの新型CPU「Core H35プロセッサ(開発コード名:Tiger Lake-H)と、PCI Express 4.0接続の高速SSDを搭載している。これらは、ノートPCとしての快適さにどのようなメリットをもたらすのだろうか。Web通販限定の最上位モデル「SIGNATURE EDITION」の実機(製品版)を通してチェックしていく。

VAIO Z 新しいVAIO Z(通常モデルのUSキーボード搭載構成)

PCI Express 4.0のSSDは“めっちゃ速い”

 新しいVAIO Zのストレージは「第四世代ハイスピードSSD」だ。一般的な言い方に直すと、PCI Express 4.0接続の超高速SSDを採用している。シーケンシャル(連続)読み出し速度は、毎秒6GBを超えるという。

 今回レビューする本体には、Samsung Electronics(サムスン電子)製のSSD「PM9A1」の512GBモデル(MZVL2512HCJQ-00B00)が搭載されていた。公称スペックはシーケンシャル読み出しが毎秒6900MB、シーケンシャル書き込みが毎秒5000MBとなっている。

 公称スペックの時点でかなりの高速ぶりだが、実際の速度はどれほどなのだろうか。ストレージのベンチマークソフト「CrystalDiskInfo 8.0.1」を使って速度を計測してみよう。同アプリの標準設定のままテストを実行すると、以下のような結果となった。

  • シーケンシャル読み出し(Q8T1):毎秒6799.95MB(毎秒約6.64GB)
  • シーケンシャル書き込み(Q8T1):毎秒4257.01MB(毎秒約4.16GB)
  • ランダム読み出し(Q32T1):毎秒767.36MB
  • ランダム書き込み(Q32T1):毎秒696.03MB

 シーケンシャル書き込みはいくらか公称値よりも遅いが、それでも非常に高速である事実は変わらない。思わず「速っ」とつぶやいてしまったほどだ。これなら、OSやアプリの起動はもちろん、写真や動画の編集、書き出しも快適だろう。

結果 CrystalDiskInfo 8.0.1の測定結果

Core H35の最高峰「Core i7-11375H」の実力は?

 VAIO Z SIGNATUE EDITIONには「Core i7-11375H」というCPUが搭載されている。このCPUはCore H35プロセッサの「スペシャルエディション」という位置付けで、動作クロックは3.3GHz〜5GHz、4コア8スレッドという構成となっている。

 Core H35プロセッサのTDP(熱設計電力)は、28〜35Wの範囲で設定される。その高いポテンシャルを存分に発揮するためには、より強力な放熱機構が欠かせない。その点、前回も触れた通り、VAIO Zではデュアルファンと太いヒートパイプからなる強力な放熱機構を備えている。この機構とVAIO独自のチューニング技術「VAIO True Performance」を組み合わせることで、TDPの最大値(35W)、つまりCPUの最大性能をより長く引き出せるようになっているという。

 ……と言葉で説明するのは簡単だが、その効果はいかほどのものだろうか。ベンチマークテストを通してチェックしてみよう。今回テストを行うVAIO Z SIGNATUE EDITIONの主なスペックは以下の通りだ。

  • CPU:Core i7-11375H
  • メインメモリ:16GB(LPDDR4X)
  • ストレージ:512GB SSD(PCI Express 4.0接続)
  • ディスプレイ:14型4K(3840×2160ピクセル)液晶
  • OS:Windows 10 Pro(64bit版)

 バッテリーの持続時間以外のテストは、Windowsの電源設定を「最も高いパフォーマンス」とした上で実行している。

CINEBENCH R23

 まず、レンダリングを通してCPUのパフォーマンスを確認する「CINEBENCH R23」を実行してみた。結果は以下の通りだ。

  • マルチコア:7078ポイント
  • シングルコア:1621ポイント

 通常の第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)と比べると、マルチもシングルもスコアが高い。稼働クロックの高さが奏功したものと思われる。

スコア CINEBENCH R23のスコア
シングルコア比較 シングルコアスコアの比較。Core i7-1165G7(2.8GHz〜4.7GHz、4コア8スレッド)の最大TDP(28W)時よりもさらに高いスコアを発揮している

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PCMark 10 Extended

 続いて、PCの総合的な性能をチェックする「PCMark 10」を使って普段使いのパフォーマンスをチェックしてみよう。今回は、通常のテストに加えて3Dゲーミングのテストも行う「PCMark 10 Extended」を実行した。スコアは以下の通りとなった。

  • 総合スコア:4876
  • Essential:9850
  • Productivity:6942
  • Digital Content Creation:5185
  • Gaming:4310

 参考に、Core i7-1185G7(1.2GHz〜4.8GHz、4コア8スレッド)を搭載するIntelのリファレンスマシンの「最も高いパフォーマンス」で同じテストを実行した際の結果を以下に示す。

  • 総合スコア:4552
  • Essential:9732
  • Productivity:8044
  • Digital Content Creation:4169
  • Gaming:3557

 ワープロや表計算といったオフィスでの作業を想定した「Productivity」のスコア以外は、VAIO Zの方が良好な結果を残している。ビデオや写真などの編集能力を試す「Digital Content Creation」や3Dゲーミングのパフォーマンスを見る「Gaming」テストのように、CPUの稼働クロックの高さがモノをいうテストでは、VAIO Zの優位性をしっかりと確認できた。クリエイター向けのアプリや、負荷の重すぎない3Dゲームは、より快適に動作しそうである。

 気になるのはProductivityのスコアだが、各社のノートPCで最近実施したテストと見比べると、VAIO Zのスコアはトップレベルである。言い換えれば「Intelのリファレンスマシンのスコアが良すぎる」状況である。筆者なりにその原因を調べてみたのだが、時間の都合もあり結論を得ることはできなかった。

PCMark 10 PCMark 10 Extendedの結果

3DMark

 Core i7-11375Hは、演算ユニット(EU)を96基備えるGPU「Intel Iris Xe Graphics」を内蔵している。このGPUは「エントリークラスの外部(独立)GPU並みの性能」を持ち、軽〜中程度の負荷の3Dゲームであれば外部GPUなしで楽しめるポテンシャルを備えているという。

 そこで、負荷の大きめな3Dグラフィックス描画をテストする「3DMark」を実行して、その実力をチェックしてみよう。今回はDirectX 11を利用する「Fire Strike」と、DirectX 12を利用する「Time Spy」を利用する。

 Fire Strikeでは、フルHD(1920×1080ピクセル)で描画するテストに加えて、4K(3840×2160ピクセル)で描画する「Ultra」テストも実施した。Time SpyではフルHDのテストに加えて、WQHD(2560×1440ピクセル)で描画する「Extreme」テストも実行した。

 各テストの総合スコアは以下の通りだ。

  • Fire Strike:5125
  • Fire Strike Ultra:1321
  • Time Spy:1839
  • Time Spy Extreme:848

 いずれも、CPU内蔵GPUとしては高いスコアを記録している。とはいえ、フルHDを超える解像度でゲームをプレイすることは厳しいことは否めない。別途、そこそこスペックの高いグラフィックスカードとThunderbolt 3接続のGPUボックスを用意して、VAIO ZのThunderbolt 4端子につなげばWQHD/4Kゲーミングも不可能ではなさそうだ。

 ただし、Thunderbolt 4ポートのデータ伝送帯域は最大40Gbps(PCI Express 3.0の5レーン相当)となるため、GPUの性能を引き出し切れない可能性は念頭に置きたい(参考記事)。

Fire Strike Fire Strikeの結果
Fire Strike Ultra Fire Strike Ultraの結果
Time Spy Time Spyの結果
Time Spy Extreme Time Spy Extremeの結果

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4K液晶でも約11時間持つバッテリー

 最軽量構成で約982g、最重量構成でも約1065gと軽量なボディーが特徴のVAIO Zではあるが、ベンチマークテストの結果を見る限り、軽いからといってパフォーマンス面では妥協していないことはよく分かる。「軽い」となれば、どこにでも持ち歩きたくなるのは人情というものだ。

 そうなると気になるのが、バッテリー駆動時間である。VAIO Z SIGNATURE EDITIONの公称バッテリー駆動時間(JEITAバッテリ動作時間測定法 Ver.2.0)は、フルHD液晶構成で約34時間、4K液晶構成で約17時間となっている。同測定法と同じ条件の下で動画を再生した際の最長再生時間は、フルHD液晶構成で約18時間、4K液晶構成で約10.7時間だという。軽量な割に、長いバッテリー駆動時間を確保できているようだ。

 ……のだが、あくまでもこれらの数値は「公称値」。実際に使ってみるとどうなのだろうか。先に登場したPCMark 10を活用して、バッテリー駆動時間をチェックしてみることにする。今回は、一般的な事務作業を想定した「Modern Office」シチュエーションでテストをしてみた。このテストではシステム標準の電源設定を“そのまま”利用している

 結果は、バッテリー残量97%から3%まで11時間10分となった。4K液晶ディスプレイはフルHD液晶の4倍の画素を駆動しなければならないため、消費電力は大きくなりがちだ。それでも、このテストで10時間超の駆動時間を記録したということは、4K液晶構成でも1日程度の外出なら充電なしでやり過ごせそうである。フルHD液晶構成なら、より長く使えることは言うまでもない。

 ただし、液晶の輝度を上げるとバッテリー駆動時間は短くなる。普段の液晶輝度を最大にする「癖」を持っている人は注意しよう。

バッテリーテストの結果 PCMark 10のバッテリーテスト(Modern Office)の結果

排熱はバッチリ ただし負荷が大きくなると……

 今回のテストを通して、Core H35プロセッサのパフォーマンスの良さ、そしてそれをうまく引き出すVAIO Zの排熱設計の優秀さを体感することができた。比較的負荷の掛かる作業をやっている最中でも、パームレスト面で不快感を覚えるほどの熱は持たない。

 ただし、その排熱設計ゆえに、負荷が大きくなるとデュアルファンの風を切る音が無視できなくなるほど大きくなる。CPUへの負荷が大きくなるシーンはもちろんだが、データの読み書きが続いてSSDが発熱してきた場合も、確実に冷却するためにファンの回転数は上がる。

 もっとも、「ゴーッ」ではなく「サーッ」という音が響くようなイメージなので、音量の割に不快感は覚えない。それでも、図書館などの静かな場所では確実に“目立つ”ことは間違いない。静寂さが求められる場所ではユーティリティーソフト「VAIOの設定」の設定を確認し、CPUとファンの動作モードを「静かさ優先」にすることをお勧めする。

 一方、負荷の大きくない場面ではファンの音はさほど気にならない。これはファンの機構面での工夫や、回転数の巧みな調整が奏功しているのだろう。それだけに、人によっては高負荷時との“ギャップ”をそれなりに大きく感じるかもしれない。

デュアルファン Core H35プロセッサを確実に冷やす放熱機構。その確実さゆえに、高負荷時はファンの音がそれなりに響く(写真はCore i7モデルで5Gモデムを搭載している構成の分解サンプル)

 パワフルなCPUと、構成次第だが4Kディスプレイや高速な5G通信を1kg前後の重量で持ち運べるVAIO Zは、現時点では貴重な選択肢といえる。ただし、最小構成の税込み価格が26万700円、構成次第では50万円を超えるという「安くはない」ノートPCでもある。

 「強力なCPUパワーを労せず持ち歩きたい」というなら、VAIO Zは確実に選択肢の筆頭となるだろう。

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