517XXとS501XXを着る中村太一さん。
デニムへの永遠の恋
「趣味って、自分の恋心みたいなモノを3D化した欲求な気がしています」と、中村太一さんがおだやかな口調で語った。2020年1月に原宿の名店『Mavins』で知り合った彼は元俳優で、長年のヴィンテージデニム・コレクターである。筆者が、同店で、棚の奥の壁にかかったリーバイスS506XX(大戦モデルのジャケット)をチェックしようと、店内にあった脚立を借りて、その脚立に登っていたときに、そっと支えてくれたのが誰あろう、中村さんだった。心優しきデニミストである。
中村さんのスペシャルデニムたち。
© Hasselblad H4D
「ヴィンテージデニムは、私にとって女性がそうであるような、愛しいものです。中学生時代から30年くらい追い求めていますね」
長年デニムに耽溺した中村さんが、なかでも、もっとも色気を感じるのは、玉虫色のデニムだという。
これがその玉虫色のヴィンテージデニム。はて?
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玉虫色のデニム?
「(恵比寿にある古着屋)『54broke』の店長・成田 亘さんが言ってたんです。玉虫色に光るデニムがあるって」
言われるまで気づかなかったが、確かに40-50年代のヴィンテージデニムには、バーバリーのコートでみかけるソラーロのような、玉虫色に見える生地がある。太陽光の下で、ヴィンテージデニム生地の表面をみると、モヤがかかったように青く光っている。これが、彼の言う、玉虫色の正体である。
なんとなくわかりますでしょうか? この玉虫色な感じ。
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玉虫色こそ究極!
「自分のなかでは、ヴィンテージデニムの究極は玉虫色の個体です。人それぞれの好みだと思いますが、僕は、玉虫色のように輝くデニム生地が大好きなんです。とくに、1950年代初期の玉虫色。色の底が見えず、海のような深さがありますね」
玉虫色を帯びた50年代の517XX(セカンド)。入手先は、恵比寿の54brokeだ。購入した当時の値段は、60万円ほど。内側のブランケットを外している。
「色が薄いヴィンテージデニムにはハマらなかったですね。色が落ちすぎると、玉虫力が弱いんです。穿くことが前提なので、濃い個体を入手して自分でエイジングして、玉虫色を追求します」
中村さんいわく、彼にとっての最高のデニムは、50年代に生産されたモデル。なかでも内側にブランケットがついた519XXだ。ブランケット付きのGジャンは、ブランケットからなにか妙なオイルが出ているんじゃないかと錯覚するぐらい、玉虫色が強くなっているという。
こちらがその519XX。『Marvins』で80万円ほどで購入し、内側のブランケットを「YMFACTORY」にて外して通年仕様にしている。ブランケット付きは、とくに玉虫色が強いとのことだ。
フェラーリ250GTOに通じる
中村さんが高額のお金を出して、ヴィンテージデニムを買う理由はなんなのだろうか?
「得体の知れない色を見ていたい、につきます。着る以外に“ずっと眺められる”のが魅力。フェラーリ250GTOってわかります? 総アルミニウム製のボディの光沢が素晴らしく美しいんです。あの光沢感に近いものを、50年代のヴィンテージデニムから感じるんです」
元俳優の中村太一は、3年B組時代に感じていたかもしれない青春の淡いきらめき、にも似た素敵な玉虫色を、ヴィンテージデニムに見出していた。
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PROFILE
中村太一
NHK土曜時代劇「桂ちづる 診察日録」川上太玄役(レギュラー)、大河ドラマ「信長」、日本テレビ「ものまねグランプリ」、TBS「3年B組金八先生」、テレビ東京「積木くずし-崩壊-」などに出演していた。が、身体を壊し、俳優業の継続を断念。現在は、営業職をメインにしつつ、ときどき吉川晃司楽曲での一人芝居やものまねで、TVやYouTubeなどに出演中。
写真:土屋 航
文:森口徳昭(GQ)
からの記事と詳細 ( 「“玉虫色”に光るヴィンテージデニムこそ究極!」──ヴィンテージデニムコレクターの私物紹介(中村太一/元俳優) - GQ Japan )
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