「ねえ、あなた考えたことない――第三惑星(地球)に人が住んでいるか」。米SF作家ブラッドベリの名作「火星年代記」で火星人の妻が夫に聞く。だが夫は地球は酸素が多過ぎて生命は存在しないと答えた▲「でも、もし人がいるとしたら、面白いんじゃない? それで、その人たちが船みたいなもので宇宙旅行しているとしたら」――。逆に、もしそんな火星人がいたとしたら、この間のジェゼロクレーターでの出来事をどう見ただろう▲ジェゼロクレーターは米火星探査車パーシビアランスの着陸地である。先日のパラシュートと逆噴射ロケットを使った着陸は火星人には一大スペクタクルだったろう。そして今度は火星初のUFO(未確認飛行物体)?の出現である▲パーシビアランスが搭載していたヘリコプター「インジェニュイティ」が、火星での初飛行に成功したという。ちなみに火星の大気の密度は地球のわずか100分の1。むろん人類が地球以外の天体で飛ばした初の飛行機となった▲重さ1・8キロ、翼長1・2メートルの同機の初飛行は地上3メートルでの30秒間のホバリングだった。このささやかな一飛びも、人類にとっての偉大な一飛びと語り継がれるのか。少なくとも今後の火星探査では飛行体が使えることが確認された▲「あなたが夢見るものはすべてフィクション、達成するものはすべてサイエンス、人類の全歴史はサイエンスフィクションにほかならない」はブラッドベリの言葉だ。火星のUFOは今、歴史となった。
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