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Monday, February 27, 2023

「アンティークコイン」という資産の選択肢 その価値と魅力とは ... - 朝日新聞デジタル

世界的なインフレや為替変動に加えて、コロナ禍、不安定な世界情勢など、不透明な経済状況が続いている。金融不安に対するリスクヘッジとして有効なのが、資産をさまざまな形に分散して保持することだろう。その選択肢の一つであり、根強い人気を誇るのが、コインの収集だ。実益を兼ね、かつ奥深いコインの世界について、鑑定士でもある「銀座コイン」代表取締役社長の竹内潤氏に話を聞いた。

金融相場の影響を受けにくい、安定した人気と将来性

キャッシュレスの時代に、コインの注目度が高まっている。といっても、暗号資産の話ではない。各国の政府などが通貨として発行した、実物のコインだ。コレクターの世界というイメージの強かったアンティークコインの収集は、資産を所有する選択肢として、趣味の領域を超えて広がっている。

「たとえば円安が進み、資産を日本円で持っていることに不安な方は潜在的に多いと思います。どうしようかという時に、金融資産をコインに換える経営者や開業医の方も増えています。その理由の一つが、コインの換金性の高さ。コイン業界では世界中でオークションが頻繁に行われていて、いざという時に海外のオークションで売ってドルを獲得するということもできるわけです」と竹内氏は語る。

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代表取締役社長の竹内潤氏

現金や預金、有価証券などのペーパーアセットの範ちゅうで資産を分散保有していると、リーマンショック級の世界的な経済危機が起こった時には、大きくダメージを受ける可能性がある。一方で、不動産や金、美術品などのハードアセットは、株式相場との価格連動性が低いとされている。

資産としてモノを集めていく手段の中でも、コインは世界的にコレクターが存在している。再生産されないため、数が急増して価値を落とすというリスクも少ない。コインの価値の将来性や安定性について、「ここ5年や10年のオークション相場は、市場評価の高いレアコインを中心に上昇傾向にあります。レアコインに関しては、オークションでもその相場から大きく下がることはめったにありませんでした」と竹内氏は説明する。

「オークションのタイミングが悪いと値段が伸びないこともありますが、そういうリスクは比較的少ないのがコインの世界だと思います。ただし、もちろん他の実物資産と同様に元本が保証されているわけではなく、売ろうと思った時に購入当時と価値が同じであったら、手数料などの分だけ目減りするのも確かです」と竹内氏は話し、こう続けた。

「とある医師の方は、毎日忙しくて時間がないけど、寝る前にコインを眺めて癒やされているそうです。コインを手に取ると、歴史を感じられるのが魅力の一つ。発行された背景や当時の経済状況を、イメージしたり調べたりするのが楽しいという方もいます。趣味を楽しみつつ資産の保全につながる実益があるのではないでしょうか」

歴史に裏付けられたストーリーやデザイン性も魅力

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貨幣の歴史は古代メソポタミア文明までさかのぼるが、鋳造されたコインで現存するものは、現在のトルコに位置するリディア王国で紀元前7世紀に作られた硬貨が最も古いとされる。貨幣経済が広まるに伴って、世界中でコインが作られるようになり、西洋ではコイン収集が王侯貴族の趣味となった。

数十万種類もあると言われるコインは、1枚1枚に歴史や文化、芸術性などたくさんのストーリーが詰まっており、コレクターを飽きさせない。世界的にファンの多いコインもあり、その人気の理由もさまざまだが、資産という観点から銀座コインおすすめのコインを紹介してもらった。

まず、コイン収集を始めたら誰もが憧れるという「ウナ&ライオン 5ポンド金貨」。イギリスのヴィクトリア女王(1819〜1901)が20歳の時に発行された金貨で、表面には女王の肖像画が描かれ、裏面のライオンは大英帝国を象徴している。400枚しか発行されておらず、オークションに出品されること自体がニュースとなりうるコインだ。

英国 ヴィクトリア・ヤング ウナ&ライオン 5POUNDS金貨300

「ウナ&ライオン」5ポンド金貨

ヴィクトリア女王は在位期間(1837年~1901年)が長く、さまざまなコインに描かれている。なかでも即位10年を記念した「ゴチッククラウン銀貨」は比較的多く流通しているのにかかわらず、人気が急上昇した。「ヴィクトリア女王のコインはどれもデザイン性が素晴らしく、定番人気です」と竹内氏。

英国 ヴィクトリア ゴチック クラウン銀貨_300

ヴィクトリア女王の即位10年を記念した
「ゴチッククラウン銀貨」

ナポレオン(1769〜1821)の「百日天下コイン」も希少価値が高い。1815年、エルバ島に流されていたナポレオンが再び皇帝に就き、ワーテルローの戦いで負けるまでの約100日の間に発行されたと聞けば、歴史好きな人が興味を抱くのもわかる。

フランス ナポレオン1世 百日天下 20フラン金貨_300

ナポレオンの「百日天下コイン」20フラン金貨

もちろん日本の古銭も定番のジャンルで、安土桃山・江戸時代の大判や小判は、海外のコレクターからも人気を集めている。近代では、彫金師の加納夏雄(1828~1898)の手掛けた、明治新政府の銀貨や金貨が高い評価を受けてきた。天子を表すダイナミックな龍、皇室を象徴する菊紋などから成るデザインの完成度が優れたコインで、日本の国家としてのステータスや技術を世界に示したものと言える。

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日本貨幣「天正大判金」

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表に描かれた龍が美しい「旧20円金貨」

10万円のコインを10枚よりも、100万円の1枚を

コインを収集しようと思った人は、どのコインを選べば良いのか? 竹内氏は「大事なのは、自分がどこに興味が湧くか。欲しいコインが見つかればそれが一番ですし、さらに資産として持ちたいのであれば、我々にご相談いただくのが良いかと思います」と語る。

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実際に、コレクターのタイプも多様性に富んでいる。特定の条件の金貨だけ集める人や、国や人物を限定して集める人、同じコインでも年号違いのコンプリートを目指す人もいる。ドイツ領東アフリカのように、今はない国や植民地のコインも人気のジャンルだ。インカ神話の太陽崇拝をデザインした南米のコインや、中国のパンダのコインなど、それぞれの土地柄を表したデザインも面白い。王族の成婚などの記念硬貨、穴などがずれたエラー硬貨は、収集ジャンルとして確立している。

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独領東アフリカ(1885年~1919年)で
発行された15ルピー金貨。

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アルゼンチンの8エスクード金貨。

何を買うかは自分自身の意志。そのうえで、竹内氏は「資産として持つのであれば、安いコインよりも、そこそこの価格のコインを買うべきでしょう。100万円で10万円のコインを10枚買うより、100万円のものを1枚買うことをおすすめします」とアドバイスする。

購入後は、サイズが小さいので保管場所に困る心配は少ない。ただ注意すべきは、金属のため経年劣化のリスクがあること。保管状況によっては変色などが進み、「グレード」と呼ばれる評価も下がってしまう。レアなコインは空気に触れないよう透明なケースに密閉した状態で所有するのが、現在のコイン収集のスタイルだ。ただし、なかには銀貨がきれいに変色した味のある状態を好むコレクターもいるという。

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「同じヴィクトリア女王の『ゴチッククラウン銀貨』でも状態の違いにより価格差がある」
と説明する竹内氏。高価なコインは透明ケースに入れた状態で店頭に並べている。

「銀座コイン」でコイン収集の扉をオープン

さすがに初心者がいきなり高額のコインに手を出すのは、不安も大きいはずだ。そこで竹内氏は、まずはオークションの様子を見てある程度の知識を持つ、という手段を推奨している。どんなコインがどんな価格で取引されているか、オークションは相場をリアルに示している現場でもあるからだ。

銀座コインでも、年に1回は帝国ホテルで大きなオークションを主催しているほか、ネットオークションを2カ月に1回開催している。郵便やFAXでも入札に参加でき、出品されるコインが掲載された冊子は、問い合わせた人に郵送するという。過去のオークションの結果もオープンにしているのは、取引をするうえで大きなヒントになる。

一方で、通販サイトだけでなく、駅近のショッピング街に実店舗を構えているのも、銀座コインの特徴だ。今ではオープンなコインショップは少なくなってしまったが、東京・銀座で55年の歴史を持つコイン専門店として親しまれ、今でも多くの買い物客が立ち止まってショーケースのコインを眺めている。

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銀座コインの実店舗。ふらっと立ち寄ることができるオープンな雰囲気なので、
コインの魅力に触れてみてはどうだろう。

店舗では、竹内ファミリーら鑑定士の話を聞けるのも心強い。語り尽くせないコインの魅力を、分かりやすく教えてくれるだろう。

銀座の地で営業55年を迎えた「銀座コイン」

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店頭にはケースに入れられた貴重なコインがずらりと並ぶ。

〔店舗住所〕〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目1番地 銀座ファイブ1階
〔営業時間〕11:00~18:30(年中無休)
〔電話〕03-3573-1960
〔メール〕ginza-co@ginzacoins.co.jp

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